【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2015.1.17朝刊)

ベルン「焼きドーナツ」

焼きドーナツは袋入りが
5個650円(税込み)

ベルンの「焼きドーナツ」

ふわり弾力 ピュアなおいしさ

 焼きドーナツはここ数年、パティスリーの定番商品となっているが、兵庫県西宮市のベルンでは昭和50年代、オープンしたての浜甲子園店の店頭で実演販売を始めた。焼きたてのいい匂いが評判を呼び、以来、ロングセラー人気商品に成長。地元では知る人ぞ知る焼きドーナツのパイオニアだ。

 店の焼きドーナツの形状は今の主流のタイプとは異なり、型に流した生地を鯛焼きのように上下に合わせ、専用の焼成機で焼く。これに対して主流のタイプは、ドーナツ型のくぼみが並んだ鉄板に生地を流し、オーブンで一気に大量に焼くことができる。

 「あえて少量を、その都度焼き上げるドーナツ焼成機を大切にしています」とオーナーシェフの倉本洋一(ひろかず)さん(42)。父の洋海(ひろみ)さんが昭和43年に西宮市で創業した店を平成25年9月に引き継いだばかりだ。

 次男の洋一さんは高校卒業後、4年間の米国留学を経て、いったん横浜で洋菓子修業を始めるが、貿易の仕事への夢をかなえるため貿易会社に就職した。ところが、就職先が倒産。実家に戻り、今度は本腰を入れて洋菓子の世界にのめりこんだ。

 小麦粉やバター、卵、牛乳などを合わせたリッチな配合の生地をはさみ焼きにすることで、直火があたらず、ワッフルのようにしっとりとパサつきのない状態で焼き上げる。

 ふわりと弾力性のある生地は、まるで低反発枕のようだ。表面の張りの下は、しっとりとした優しい甘さのプレーンなケーキ。華美な装飾や味わいの変化などを必要とせず、シンプルを極めたピュアなおいしさを感じさせる。

 やさしくほどける独特の食感は、専用焼成機だからこそ成せる業だ。一度に6~8個しか作れない手間のかかる仕事だが、「お菓子づくりはお母さんのお弁当づくりと同じ」。愛情込めた手作りのお菓子づくりは、先代から続くベルンのポリシーだ。

 倉本さんの体に染みついたお菓子への愛情は、たゆまぬ努力の源。原材料の生産者との交流など、おいしさや安全性の高さを追求し、単に伝統を守るだけではなく、お菓子をもう一歩先へと発展させている。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

《もうひとこと》
 シナモンは、焼成から一晩寝かせた焼きドーナツにシナモンシュガーをかけています。ほんのりとしたシナモンの香りが焼きドーナツにピタリとはまり、くせになる味です。

ベルン甲子園本店
【住  所】兵庫県西宮市学文殿町1の8の19
【電  話】0120・47・4958
【営  業】午前9時~午後9時(休日は元旦のみ)
【最寄り駅】阪神鳴尾駅

msn産経ニュース 2015.1.17

産経関西 スイーツ物語 2015.1.17

2015.1.19