【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.10.27朝刊)

五感の「お米のカステラ五感まんま」

お米が変える日本の洋菓子

「お米」にこだわり続ける洋菓子店「五感」は大阪北浜に本館を構える。浅田美明社長(51)は幼少の頃、両親から「お米を大事にしろ、食べ物を粗末 にするな」と教えられて育った。食料自給率が40%を割り込み、農家数も激減した現在、日本の農業の衰退ぶりは否定できない。これを何とか食い止めよう と、農業を生かした菓子づくりを目指し、平成15年に五感を立ち上げた。

ロールケーキのスポンジやクッキーの生地には通常小麦粉が使われるが、五感では米粉。小麦粉に比べると風味の劣化が早く、生地のしっとり感も長時間持続しないため、米粉素材の菓子は賞味期限を短くせざるを得なかった。

しかし、「賞味期限が短ければ、一番おいしい状態でお客さんに召し上がってもらえる」とポジティブに捉えた。これが市場に受け入れられ、「お米の五感」と言われるようになった。

「お米のカステラ五感まんま」は、浅田さんが長年温めてきたカステラへの思いを具体化させたものだ。「技術革新で米粉の賞味期限は延びたが、日本中どこに でもあるカステラをいかに五感らしくするかが問題。米粉で生地は作れても、その先になかなか進めなかった」と振り返る。

ところが-。三角のおにぎり形のパッケージに出合うや否や、インスピレーションが次々と湧き、「米」「ごはん」「おにぎり」「お母さん」「まんま」と数々のキーワードがパズルのピースを組み合わせるかのようにピタリとはまり、一気に商品が完成した。

カステラを引き立てるのは、風味付けに使われている米麹のみそ。これに、池田の地酒「呉春」で香りを添えた。和三盆の味わいも加わってまろやかな余韻が残 る。ふんわり焼きあがった生地から、ごはんの香りがバターの香りを包み込むように湧き上がる。生地を口にしたとき、ごはんの粘りが心地よく残る。

浅田さんは願う。「楽しさ優先になりがちな大阪名物が多い中、品のいい面白さを保ちつつ、食い道楽の街・大阪の名に恥じない、味にこだわった洋菓子店があることを全国に知ってほしい」

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「和三盆こんぺい」は1袋473円

【もうひとこと】
風味はまるで朝ごはんの安堵(あんど)感。子供に「まんまおあがり」と手を差しのべ、食べさせたくなる感覚です。

【住  所】大阪市中央区今橋2の1の1 新井ビル
【電  話】06・4706・5160
【営  業】午前9時半~午後8時(日曜・祝日は午後7時まで、正月三が日のみ休業)
【最寄り駅】大阪市営地下鉄・京阪北浜駅

msn産経ニュース 2012.10.28.7:00
産経関西 スイーツ物語 2012.10.27