【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.9.14朝刊)

ボックサンの「カシミアチーズ」

匠が生んだ感銘の舌触り

カシミアチーズ

ボックサンの「カシミアチーズ」

昭和10(1935)年創業のボックサンは神戸では知る人ぞ知る老舗洋菓子店。二代目の福原敏晃社長(60)は幼少の頃から家業を手伝い、洋菓子の世界の中で育った。教師を目指して大学に進んだが、父の思いを継いで、卒業後はパティシエの道を選んだ。今では「神戸マイスター」「兵庫の匠」の称号を得るなど、神戸洋菓子のキーパーソンとして活躍中だ。
※敏晃の敏は正式には、矢の大が母、右に攵

17年前、専門学校の大手前製菓学院(大阪市中央区)に指導者として迎え入れられ、教師になる夢が現実のものとなった。現在も同校の特任教授として教壇に立つ。今までに育てたパティシエは2千人以上にのぼる。

「カシミアチーズ」は阪神淡路大震災の後に改名したボックサンの看板商品だ。元々は福原さんのニックネーム「ふくちゃん」の名で愛されたが、震災により近隣需要が落ち込み、販路を県外に拡大するにあたり、神戸スイーツらしいスマートな名前にした。福原さんの全国ネットのテレビ番組出演も反響を呼び、ピーク時は1年に42万個も売れるヒット商品に成長した。

「カシミアチーズ」はデンマーク産のクリームチーズをたっぷりと使用し、粉を最小限に控えたスフレタイプのチーズケーキだ。味わいはチーズケーキよりチーズそのものに近く、「カシミア」の名の通り、滑らかな舌触りの心地よさに感銘を覚える。チーズのふくよかな乳味と爽やかな酸味がサークルゲームのように味わいを循環させ、飽きることがない。ピタッとひんやり舌に張り付くぐらいの温度が最適で、舌の温度によってスフレ生地にたっぷりと含まれたチーズの香りが開花する。

福原さんの楽しみはお菓子作りの楽しさを教えることだ。10年前に始めた東須磨本店のお菓子教室では、実際に店頭に並んでいるケーキの作り方を、レシピを公開して実習形式で指導している。生徒さんはデモンストレーションを見てから実際に作り、完成後は一緒に試食して持ち帰る。お菓子の作り方だけではなく、それぞれのお菓子の特徴やおいしさの秘密を福原さんの軽妙かつ熱いトークで伝授し、付加価値を付けるのだ。10年間通い続ける82歳のおばあちゃんや、リタイアしたシニア男性もいる。

パティシエからの一方通行になりがちな菓子作りを静観し、お客さんとの交流により双方向に。「学ぶということはまねるということ」と教室で福原さんは繰り返す。父をまねた幼少期の記憶がよみがえる。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

「カシミアチーズ」(プレーン、ショコラ)5個入り893円

【もうひとこと】お菓子教室は体験受講できるそうです。

神戸洋藝菓子 ボックサン
【住  所】神戸市須磨区堀池2の1の25
【電  話】078・731・3675
【営  業】午前9時~午後8時(年中無休)
【最寄り駅】山陽電鉄東須磨駅

 

msn産経ニュース 2013.9.14 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.09.15 08:09