【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.9.21朝刊)

ル・フルティエの「幸せの黄色いチーズ」

地球サイズの願いが生んだキャンバス

ル・フルティエの「幸せの黄色いチーズ」

ル・フルティエの「幸せの黄色いチーズ」

「丸いドーム形が地球みたいでしょ。この高さが重要で、流れ落ちるソースをイメージして土台のチーズケーキを作りました」。オーナーシェフの宮脇和也さん(45)が語る。京都の和洋菓子店に生まれた野球少年は、気が付けば父と同じ道を歩みはじめていた。

京都や岡山で洋菓子の修業をした後、神戸の名店「レーブドゥシェフ」に入店、お菓子に熱い思いを注ぎ込む佐野靖夫社長の影響を受けた。「良い材料を使え、余計なものを入れるな、お客さんの顔を思い浮かべて作れ…」。師の教えは今も心の奥深く刻み込まれ、片時も忘れることはない。

レーブドゥシェフを卒業し、タルトの有名店「キルフェボン」が東京・銀座にオープンした際のグランシェフとして迎え入れられた。独立は39歳のとき。2年半かけて関西一円で候補地を探した。「街とともに成長する店に…」。当時、人口増加率が全国屈指だった京都府精華町に白羽の矢を立てた。

「幸せの黄色いチーズ」は宮脇さんが2年前に開発したチーズズコット(ケーキ)だ。ちょうどそのとき東日本大震災が起こり、宮脇さんの願いは街から地球規模へと広がった。「子供たちに笑顔が広がる平和な暮らしを…」と宮脇さんは願う。

ふわっと軽いチーズケーキの生地が、口中で速やかに溶けていく。滑らかな食感がコクのあるチーズの風味を伴い加速度的にチーズケーキの味わいを増幅させる。チーズ、砂糖、牛乳、卵。シンプルな構成要素が安心安全の旗票(きひょう)となっている。

別添のソースが面白い。「キャラメルソース」は一見どろりと高濃度のものを連想するが、サラサラで生地にスッと吸い込まれる。甘さが控えられているので、チーズケーキの優しいミルク味に、ほろ苦いアクセントを付与してくれる重要なパートナーだ。「オレンジソース」は伊予カンの甘露煮をダイスカットにして入れている。身の苦味と、それを漬け込んだオレンジリキュール・グランマニエにより、芳醇(ほうじゅん)な味を形成する。

開店から7年。すっかり地元に溶け込んだ店には、まあるいチーズケーキが店頭に出てくるたびに子供たちの歓声が響く。ソースで地球に大陸を描くも良し、未来図を描くも良し。幸せの黄色いチーズが永遠に幸せのキャンバスであれと願う。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

「幸せの黄色いチーズ」1155円

【もうひとこと】選ぶ楽しさが広がるように…と、季節感あふれるソースを順次開発中です。

ル・フルティエ
【住  所】京都府精華町祝園西1の9の46せいかガーデンシティ1F
【電  話】0774・95・0809
【営  業】午前9時半~午後8時(不定休)
【最寄り駅】JR片町線祝園駅、近鉄京都線新祝園駅
【webサイト】http://www.le-fruitier.jp/

 

msn産経ニュース 2013.9.21 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.09.21 21:38