【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.11.23朝刊)

「ここなつ・まかろんチビ缶」千円

「ここなつ・まかろんチビ缶」千円

ツア・クローネの「ここなつ・まかろん」

愛着が奏でる三拍子

サクッとした歯応えと、香ばしいナッツの香りがたまらない「ここなつ・まかろん」はツア・クローネ(京都府宇治市)の人気商品だ。オーナーシェフの阪本秀伸さん(50)は平成3年の独立当時から愛着を持って作り続けている。

1枚の鉄板(オーブン皿)に80~90個絞る。通常のマカロンの生地はアーモンドの粉を使うため卵白と砂糖で保形できるが、「ここなつ・まかろん」は代わりにココナツを使うため保形できず、粉(コーンスターチ)でとろみをつける。

阪本さんはココナツの刻み具合にこだわった。細かいと生地が固くなって食感が悪くなり、粗すぎると絞り袋で絞るときに詰まってしまう。「生地の材料を混ぜ合わせるときに、従来の木しゃくしからホイッパーに変えてみると、軽いサクッとした食感になりました」。さらに、ココナツをオーブンで一度焼いてから生地に合わせることにより、香ばしさを際立たせた。

重要なのは何といっても焼き上げの工程。サクサクの食感を得るために、鉄板に絞った生地を約30分かけて火を通し、しっかりと乾燥させる。これにより味、香り、食感の三拍子そろったお菓子になるのだ。

封を切るなりココナツの香りが広がる。手に取ると想像以上に軽く、口へ運びサクサクッ、サクサクッ…と、気が付けば5つ、6つはあっという間だ。ナッツから染み出す脂質と生地の甘味が口中で溶け合い、香ばしさとともにふわりと膨らんでは消える。その余韻を楽しむ間もなく次の香りが押し寄せ、エンドレスに楽しみたくなる。

小袋入り販売のみだったが、「食べ出したら止まらないのでたくさん入ったのがほしい」との声が多かったため昨年、米菓の進物用に使われる立方体のブリキ製缶を購入し、1・2キロ入りの「ここなつ・まかろんデカ缶」として商品化した。夫人でチーフパティシエでもある佐季子さん(47)のアイデアで、小分け袋とシリカゲルをセットして販売したところ、たちまちヒット商品になった。

ツア・クローネとはドイツ語で「上を目指す」の意。阪本さんが次に目指したのは「チビ缶」だ。味のバリエーションを増やし、ギフトに対応できるよう、今度は茶やノリに使われる丸缶に詰めた。阪本さんの大胆なアイデアと、チーフの繊細な心配りがツアクロファンの心をつかんで離さない。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

「ここなつ・まかろんチビ缶」千円

【もうひとこと】バニラ、抹茶、シナモン、カレーの4種類あります。どれも食べ出したら止まりません。

ツア・クローネ
【住  所】京都府宇治市琵琶台1の4の2
【電  話】0774・25・6633
【営  業】午前9時~午後7時半(木曜定休)
【最寄り駅】JR宇治駅
【webサイト】http://zur-krone.co.jp/

msn産経ニュース 2013.11.23 09:00
産経関西 スイーツ物語 2013.11.24 10:10