【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2013.2.9朝刊)

太郎本舗「くいだおれ太郎の人形焼き」

子供の頃に引き戻される味

道頓堀にある「くいだおれ人形」は一日中観光客に囲まれる人気者。そのすぐ隣にある土産物店「いちびり庵」はファンシーショップを営んできたが、平 成5年、土産物屋に業態を変え、連日大入りの繁盛店となっている。営業部長の福岡武志さん(39)は店内の一角に「くいだおれ太郎」の公式グッズを集めた コーナーを設け、「大阪の顔」を大切に扱っている。

食堂ビル「くいだおれ」は20年に閉店したが、キャラクターの「くいだおれ太郎」は街 のシンボルとして残った。3年前、人形焼きを作る話が持ち上がり、福岡さんは商品化のパートナーに名乗りを上げた。かつて大阪の老舗米菓店、まんじゅう店 の社長らと共同でたい焼きを開発、販売した経験があったからだ。

新しい大阪の名物に。行き交う人々が気軽に買って食べ歩きできるように。こうした思いから、くいだおれ太郎の人形焼きが誕生した。

「『ヘタは取らんといて』とよく言われるんです」と福岡さん。本来なら形が重要な人形焼きだが、見るからにおいしそうなはみ出た部分は、誰の目にも芳ばしく、焼きたての香りも相まって、思わず言葉に出るのだろう。

「子供からお年寄りまで誰もが安心して食べられるものに」「水を入れたら原価は下がるが、味が落ちる」…。福岡さんはプロの意見を素直に受け入れ、牛乳の みで生地を作ることにした。単純なものだからこそ食べ飽きない工夫が必要だ。甘さを控えるために砂糖を極力控え、はちみつで甘味とコクを加えた。

その結果、生地の乾燥を抑えることができ、柔らかい口どけがうまれた。優しいミルクの味わいが口の中いっぱいに広がると気持ちまで穏やかになり、ほんわかと子供の頃に引き戻されるかのようだ。

「ありとあらゆる人形焼きを食べ歩きましたが、うちのが一番おいしい」と福岡さんは胸を張る。自ら生み出した味を「くいだおれ太郎」と共に大切に守り続けてほしい。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「くいだおれ太郎の人形焼き」。5個入り300円、10個入り500円

【もうひとこと】
お子さんは上得意。いい匂いに釣られて寄ってきてくれるそうです。それはまさしく縁日の風景。道頓堀の原形です。

【住  所】大阪市中央区道頓堀1の7の21
【電  話】06・7652・9164
【営  業】午前10時~午後10時
【最寄り駅】大阪市営地下鉄なんば駅

msn産経ニュース 2013.2.9.9:00
産経関西 スイーツ物語 2013.2.10