【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.6.22朝刊)

パティシエ コウタロウの「えんまんロール」

塩味絶妙のバタークリーム

「あらゆる人たちが円満に暮らせますように…」。「パティシエ コウタロウ」のオーナーシェフ、清水幸太郎さん(42)のこんな思いから名づけられたお菓子が「えんまんロール」だ。「『進物用に日持ちするロールケーキを』とお客さまからよく言われるので、冷蔵庫で10日持つものを開発しました。生地は長期保存してもしっとり感を残すために、水分を多く含むよう工夫しました」と清水さん。

生地には牛乳や水あめを多めに入れ、焼き上げと同時に裏返して水分蒸発を抑える。バタークリームには、南仏プロバンスの海洋深層水塩を合わせる。生地が軟らかすぎるとバタークリームの固さに負け、ロールに巻く際に割れたり破れたりしてしまう。ほどよいバランスを保ち、きれいに巻けるかが重要な課題だ。表面にもバタークリームを塗り、香ばしくキャラメリゼされたアーモンドを塗す。

冷蔵庫から取り出し、常温でバタークリームが軟らかく戻るまで待つ。焦らないのがポイントで、やや軟らか過ぎるぐらいにクリームが戻った時が食べ頃。“しっとりふわり”の生地にまたたく間にクリームが浸透し、生地とクリームの境目がわからないぐらいのスピード感で溶けるのが心地よい。時々訪れる表面のアーモンドとキャラメルが風味と食感に抑揚をつける。舌先でクリームの甘味を感じた後から迫り来る軟らかい塩味は、互いの味を深め合い、いつまでも余韻を残す。

清水さんは幼少期から、将来は料理人になると決めていた。ところが、専門学校のパンフレットにあった製菓学校の案内が目にとまり、進路を変更。卒業後に修行した後、平成13年、故郷の高槻に自店を構えた。「小難しいフランス菓子を並べても売れないので、スポンジ、カスタード、フルーツがメーンのわかりやすい商品構成にしました」

21年、カフェを併設した2店舗目の土室(はむろ)店をオープンさせた。「お客さまとの信頼関係もでき、少し凝ったお菓子を並べても理解していただけるようになりました」。お客さん本位の控えめな姿勢を保ちながら、少しずつ自己主張を始めた清水さん。「えんまんロール」の「えん」は清水さんを手塩にかけて育てた周りの人との「縁」であり、うまみのポイントの「塩」でもある。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「えんまんロール」(バニラ、チョコレート)は1本箱1050円、2本箱2050円、3本箱3050円 

【もうひとこと】チョコレートのロールケーキは、冷たい牛乳でいただくとおいしいです。

「パティシエ コウタロウ」土室店
【住  所】大阪府高槻市土室9の5
【電  話】072・697・3131
【営  業】午前10時~午後8時(不定休)
【最寄り駅】JR摂津富田駅

msn産経ニュース 2013.6.22 09:00
産経関西 スイーツ物語 2013.06.23 10:22