【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2014.5.25朝刊)

楽emonの「コーヒーのわらびもち」

「コーヒーのわらびもち」は1個324円(5切れ入り)

口の中に広がる和洋の調和 楽emonの「コーヒーのわらびもち」

妄想も味わいに

日本好きが高じ、兵庫県尼崎市で和菓子の修業に入った米国の青年は、近松門左衛門にあやかり、師匠から「楽emon」の名をいただいた。

 楽emonには米ニューヨークのブルックリン時代、友人ボブと夕闇迫るマンハッタンを眺めながらコーヒーを飲んだ懐かしい思い出があり、これをお菓子にしたのが「コーヒーのわらびもち」だ。

 この妄想ストーリーを作ったのは、店主の坂井博一さん(40)。尼崎市の和菓子店に生まれたがパティシエとなり、15年間、洋菓子店に勤務した経験がある。洋菓子を知れば知るほど和菓子への愛着を感じ、やがて実家へ戻り、父のもとで和菓子を学んだ。

 平成24年に構えた自店には、餅や団子など、「朝生(あさなま)」と呼ばれる手軽なおやつが並ぶ。

 坂井さんの和菓子の特徴は、昔ながらのお菓子をリノベーション(刷新)していることだ。見た目や味に懐かしさを覚えるが、ひとつひとつの味や食感に手が加えられている。「舌と上あごで味わってもらえるように工夫しています」と坂井さん。舌で感じる味覚とは異なる、上あごから脳に伝わる感覚的なおいしさまでも想定している。

 わらびもちは和菓子の定番アイテムだ。わらび粉や葛(くず)、蓮根(れんこん)でんぷんなどをブレンドした生地を、通常は最後まで炊き上げて仕上げるが、半分炊き上げてから蒸し上げている。これにより歯切れの良いやわらかさとなる。大阪・中之島で土佐堀川を眺めながら夫人とコーヒーを飲んでいる時に思いついたコーヒーのわらびもち。洋菓子の定番レパートリーを和菓子に持ち込めば、その組み合わせは無限に広がる。

 舌と上あごの間にピッタリ収まるサイズにカットされている。一切れ口に含むと、コーヒーの風味がふわりと広がる。その香りは黒糖を思わせ、和洋の違和感を全く感じさせないほどに調和している。

 坂井さんが目指すのは、和菓子を通じて日本の伝統的な文化を継承することだ。ひな祭りや端午(たんご)などの節句をはじめ、季節を重んじる和菓子の世界観を買いに来る人、食べる人に無意識に感じ取ってもらえるように趣向を凝らす。

 「過去に和菓子が少し低迷した時代がありました。本来の所以(ゆえん)を知らずに、お菓子の記憶だけが残っている若い方も多いように思います」と坂井さん。店のディスプレイに古い和菓子の木型や菓子箱を使用するなど、訪れる客にさりげなく訴えかけている。

 (文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

 《もうひとこと》朝生は朝から作る和菓子です。お昼には売り切れてしまう商品も多いので、朝からのお買い物がおススメです。

楽emon(らくえもん)
【住  所】兵庫県尼崎市南武庫之荘1の22の22
【電  話】06・6438・6300
【営  業】午前10時~午後7時(なくなり次第終了)、日曜・祝日定休
【最寄り駅】阪急神戸線武庫之荘駅

2014.5.25

産経関西 スイーツ物語 05.25

msn産経ニュース 2014.5.24 10:00