【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2014.11.17朝刊)

満月堂 豊助饅頭

「豊助饅頭」は10個620円(税込み)

満月堂の「豊助饅頭」

地道な仕事が素材を生かす

 満月堂(神戸市北区淡河町)の「豊助(とよすけ)饅頭(まんじゅう)」は直径5センチほどの小さな丸い薄皮饅頭。昔懐かしい経木(きょうぎ)=薄い木の板=に包まれ、手ごろな価格のため、地元のみならず、観光地やゴルフ場が多い北六甲地帯の定番土産として知られる。

 神戸市は六甲山地を境に、海側は夜景で知られる観光都市。しかし、山の反対側には広大な農地が広がり、灘の酒米をはじめ、花の栽培など近郊農業も盛んだ。

 淡河町は古くから宿場町として栄え、江戸時代には街道が交差する交通の要衝だった。満月堂は明治15年創業。

 「有馬温泉まで続く街道沿いの地の利を生かし、湯治客の土産や、近隣住民の手軽なおやつとして販売し始めたようです」と社長の吉村研一さん(52)。

 生地は、小麦粉と上白糖、水を合わせて練り、北海道産の小豆から軟らかく炊いたあんを包む。これを並べて約7分ほどの短時間で一気に蒸し上げる。シンプルな材料と製法だが、薄皮はこしあんの軟らかさを保つ最小限の薄さであんをまとい、こしあんの旨みを最大限に引き出すため甘味を抑えている。

 「糖度を抑え、水分が多くなると日持ちはしませんが、おいしさを優先させています。できたてを食べていただきたいので、2、3時間おきに何度も蒸しあげます」と吉村さん。

 店の奥の工場から、白い蒸気がふわーっと立ち上り、香りが店にも充満する。まだ温かさを感じるぐらいが食べごろだ。手で割るとふわり。湯気とともに、小豆のやさしい香りが鼻をくすぐる。口に運べば、水分をたっぷり含んだこしあんと生地が一体化し、のどごしが良い。豆本来の風味を感じることができる繊細な味わいだ。

 でき立ての豊助饅頭や生菓子を求めて毎日通う地元客も多いという。

 農作物の旬を知り尽くした客に満足してもらえるよう、旬の素材を最高の技術で菓子に仕上げている。

 「この秋は淡河でとれた枝豆の薄皮をひとつずつ手でむいて、ずんだ餅を作りました」と吉村さん。「生まれ育った地元の皆さんに愛されてこそ」と、地道な仕事に立ち向かう。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

《もうひとこと》店内でお茶と一緒にいただくこともできます。保存料などが入っていないので、翌日には少し硬くなり始めますが、オーブントースターで焼くと、また格別です。

満月堂
【住  所】神戸市北区淡河町淡河754の1
【電  話】078・959・0031
【営  業】午前8時~午後6時半(水曜定休)
【最寄りバス停】神姫バスの淡河本町北または淡河本町南のバス停

 
msn産経ニュース 2014.11.15
産経関西 スイーツ物語 2014.11.16

2014.11.17