【産経新聞社】~スイーツ物語~ 牛蒡の滋味包むまろやか餅 (2011.1.6 夕刊)

 お正月の和菓子といえば「花びら餅」。丸い白餅の上に紅のひしもちをのせ、白みそと甘煮にした牛蒡(ごぼう)をおき、半月状に折りたたんだものをいいます。

このお菓子の由来は宮中の正月行事につかわれた「菱葩(ひしはなびら)」とされています。平安時代から宮中では、猪、鹿、大根、瓜(うり)、押鮎などを食べて長寿を願う「歯固め」といわれる行事がありました。これを簡素にしたものが「菱葩」。鮎は牛蒡に見立てられるなど、かつての名残が見られます。 叶匠寿庵(滋賀県大津市)でも昭和40年ごろから「花びら餅」をつくっています。特徴は牛蒡だけではなく、金時人参が入っていること。浅く煮上げた後、約1年をかけて漬け込み、味をしっかりと染み込ませています。牛蒡や人参の滋味を見事にお菓子の甘みやうまみへと変えていきます。中に入っている白みそ味の紅あんもまろやかな甘みです。 外側の生地には白餅は使わず、しなやかな食感の羽二重餅でふんわりと仕上げています。材料に使われているのは、もち米の中でも最高級といわれている「滋賀羽二重糯」。選び抜かれた地元のもち米のみを使用しています。それをほど良い具合の滑らかな口当たりに仕上げています。

 紅白のおめでたい色目も晴れやか。毎年年末から年始にかけて(今年は1月9日まで)販売され、人気商品になっています。はんなりとした、お正月にふさわしいお菓子ですね。
(関西スイーツ代表/三坂美代子)

【写真説明】初春のおめでたい雰囲気の漂う「花びら餅」