【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.4.21朝刊)

洋菓子工房ボストンの「焼きドーナツ」=口解け軽やか多彩な味= 「ドーナツ」と言えば、揚げ油と砂糖のもったり重い味を連想しがちだが、これは「焼きドーナツ」。フレッシュバターと小麦粉などを合わせた生地をオーブンで焼き上げている。口に入れたとき、揚げ物特有の生地の粘りや重さを感じさせず、軽い食感とバリエーション豊かな味で数年前からブームとなっている。 洋菓子工房ボストンの社長、安政義雄さん(58)は約3年前、出張中の東京で「焼きドーナツ」に出会った。「これは売れる!」と直感し、戻るとすぐドーナツ型を購入し、商品開発に着手した。
「老若男女、誰でも安心して、いくつでも食べられるような、やさしいドーナツを作りたい」
こう考えて「若い感性と女性らしさで、時代にマッチした商品を作ってほしい」と、開発を製造責任者の増谷安紀子さん(28)に委ねた。増谷さんは府洋菓子協会主催のクリスマスケーキコンテストで昨年入賞を果たすなど安政さんの信頼厚い職人。店のチーフとして新商品の開発に当たる機会は多いものの、既存の洋菓子とは全く違う課題に「膨大な試作を重ねました」と振り返る。
大学の経済学部を卒業後、家業を継いだ安政さん。東京の新進気鋭のシェフの下で修業を積みながら、「本場仕込みのケーキは地元・寝屋川では受け入れられない」と考え、さらに大阪のパンとケーキの店で修業を重ねた。「庶民的でありながら華のあるものこそが大阪のケーキだ」という信念のもと、同店は46年の長きにわたり地元に愛され続けている。20代の女性パティシエに開発を一任する思い切りと、流行を察知する先見性が安政さんの懐の深さといえそう。
「焼きドーナツ」の味わいは驚きの連続だ。「プレーン」は軽やかな口解け。特筆すべきは「チョコレート」。こんなに甘くないドーナツを商品化する勇気に感服する。消費者目線を持つ女性パティシエならではの感性の賜物(たまもの)だ。
新時代の味わいに生まれ変わったドーナツが、変わらぬ「輪」の形で家族のだんらんを紡ぐのが安政さんの願いだ。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
【もうひとこと】
安政さんは「なにわの名工」(府優秀技能者表彰)も受賞、名実ともに信頼のおけるお菓子屋さんです。【住  所】寝屋川市八坂町7の7
【電  話】072・822・8640
【営  業】午前9時-午後8時(元日定休、夏期に不定休あり)
【最寄り駅】京阪寝屋川市駅

産経関西 スイーツ物語 2012.4.23
msn産経ニュース 2012.5.5.10:00