【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.8.18朝刊)

パティスリーフリアンの「和(なごみ)」

蜂蜜が生み出す自然な甘味

一見「おはぎ」のようなこのスイーツはパティスリーフリアンの「和(なごみ)」。その名の通り、心をなごませる“和”風味のお菓子だ。シュー生地の中には特製クリームがたっぷり詰まっており、さらに全体をホワイトチョコレートでコーティングしたあと、きな粉がまぶされている。

特製クリームの秘密は自家製黒蜜にある。オーナーパティシエの松島俊哉さん(52)は「沖縄産の黒砂糖を使っています。新鮮な卵と牛乳や生クリームの濃厚な味わいに負けないよう、試行錯誤の末にたどり着いた配合です」と語る。

この商品の元になったのは、小さめのシュークリームにチョコレートをコーティングした「シュートリュフ」と呼ばれる同店の人気商品。「表面のチョコレートが手や口の周りについてしまう…」という女性客の声を反映して、より食べやすく改良した。

小ぶりなエクレアの形状で、大きな口を開けなくてもふた口程度で食べられる。外のホワイトチョコレートがパリッ! シュー皮がサクッ! 中のクリームがふわりっ。まずは3段重ねの歯ごたえを楽しむ。

「きな粉」と「シュー皮」。大豆と小麦粉のダブルの香ばしさが、チョコレートと乳の2種類の油脂のうまみを驚くほど軽やかに感じさせるとともに、一層引き立てている。

あくまでもふんわりと軽く仕上げられたクリームは、口解けが良く食べ飽きない。黒糖の独特のコクが余韻となる。乱暴な言い方をすると、あべかわもちとシュークリームの“いいとこ取り”。それぞれの素材の個性を生かしつつ、突出させずに一つのお菓子にまとめ上げるバランスの妙。和洋折衷のチグハグさはみじんも感じさせない。

一見シンプルなお菓子だが、味の構成要素は重層的で複雑。それをサラリとまとめ上げる手腕は、一流ホテル出身の松島さんならではの技量だろう。

創業47年。親しみやすい街の洋菓子店だが、松島さんは2代目で、大学を卒業すると当時mouhitokoto.png大阪の最高峰といわれた「ホテルプラザ」で修業を積んだパティシエだ。豊富な経験と、材料や技法などの多彩な知識がさりげなく普段着のお菓子に生かされている。

平成21年の発売から丸3年。今では地元だけではなく、大阪のデパ地下の催事にも引っ張りだことなっている。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)

【もうひとこと】
この季節は凍ったまま、「シューアイス」のようにいただくのも美味。

【住  所】寝屋川市池田南町1の4
【電  話】072・826・5733
【営  業】午前9時~午後9時(不定休)
【最寄り駅】京阪本線寝屋川市駅
産経関西 スイーツ物語 2012.8.18
msn産経ニュース 2012.8.18.8:00