【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.9.22朝刊)

ラ・キャリエールプイプイの「魔法のチーズロール」

こだわりの不思議な味わい

出来上がったケーキに、パティシエが「プイプイ」と呪文をかけて、さらにおいしく…。そんな楽しい発想で誕生したのが「ラ・キャリエールプイプイ」 だ。オーナーシェフの直谷謙治郎さん(47)は今から8年前、「体が動くうちに独立して自分の店を持ちたい」と思い立ち、3カ月後には勤めていた店を辞 め、親方や先輩らの助けを借りて1年たたないうちに開店の日を迎えたという。

「魔法のチーズロール」は修業時代に直谷さんが考案したも の。小さな型で作るスフレチーズの生地が余り、後輩が困っていたためオーブン皿に流すよう指示した。ところが、焼き上がりは軟らかく、型で抜くことはおろ か持ち上げることもできない。悩んだ挙げ句、「巻いてみよか?」。そろりと巻いてみるとふわふわのスフレ生地でチーズ味のロールケーキが出来たという。そ れから改良を重ね、今も古巣で定番としてショーケースに並んでいる。

これを自店でも目玉商品にすべく、直谷さんは「1人でまるまる1本食べられるぐらい口当たりの良いケーキに」と、原点に立ち返って材料の選択や配合などを徹底的に見直した。

生地の材料は、クリームチーズと粉と卵白と乳。いたってシンプルだが、その選択にこだわった。クリームチーズは業界のプロが絶賛するデンマーク産。クセが ないのにコクがあるというすぐれもの。卵白は、製菓材料として冷凍卵白が広く流通しているが、あえてこれを使わず、生卵から取り出している。これをしっか りと泡立てて合わせているため、生地がふかふかに仕上がるのだ。さらに米粉を多用することで、巻いたとき「しっかりした弾力があってしかもふわふわ」とい う食感が得られた。

チーズロールのまん中には、たっぷりの生クリームと、アクセントに添えられたカスタードクリームが入る。生クリームは 濃度の異なる3種類を混ぜ、濃度の高い生クリームの濃厚なミルク味とコク、濃度の低い生クリームの軽やかな口当たり。それらが絶妙に組み合わさって、時に しっかり、時にあっさり、ふんわり、しっとり…。

魔法の力でいろんな表情を持った不思議な味わいのスイーツは、今やこの店一番の人気商品で、地元では手土産の定番となっている。
(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「魔法のチーズロール」は1本950円

【もうひとこと】
チーズケーキがそのままロールケーキになっています。チーズが入っていることがわからない人も。心安らぐナチュラルな味です。

【住  所】大阪府交野市松塚23の6
【電  話】072・894・3399
【営  業】午前10時~午後7時30分(不定休)
【最寄り駅】京阪交野線郡津駅

msn産経ニュース 2012.9.22.08:00
産経関西 スイーツ物語 2012.9.23