【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.5.18朝刊)

パティスリーヤマキの「大正ロマンぶっせ」

日本の風土に合わせた食感

パティスリーヤマキの「大正ロマンぶっせ」

フランス菓子でありながら、どこか懐かしい和のテイストを感じる「ぶっせ」。大阪・池田市のパティスリーヤマキの「大正ロマンぶっせ」は、そのイメージにピッタリのお菓子である。

レトロな街並みが人気のエリア。オーナーシェフの山木貞直さん(39)は元々は料理人になりたかったが、父の友人だった菓子職人の弟子となり、その後国内外で修行を重ね、平成19年、この地に自店を持った。

「当初はロールケーキブームの真っただ中だったので、いろいろ並べたら売れましたが、1年もすると、プレーンなロールに売れ筋が固まりました。それから落ち着いて商品開発に取り組み、いろんなお店で学んだケーキの中から、自分の好みに合うものだけを作って並べました」と山木さん。自らの舌が納得するまで試作を重ねる熱心さが地元客に受け入れられ、今ではすっかり街に溶け込み人気店となっている。

「大正ロマンぶっせ」は子供連れや観光客が手軽に持ち帰る人気商品だ。ふわりと焼き上げた生地に、クリームがサンドされたシンプルな焼き菓子だが、独自のアレンジでオリジナルのフランス菓子とは一線を画す。

通常は小麦粉と卵を合わせた生地だが、香ばしい風味を出すためにアーモンドの粉を加えている。なめらかに、そして、“ふかふかっ”とあがるように、別立て(黄身と白身を別々に泡立てる)の卵はしっかりと立てて、ざっくりと合わせると素朴な風合いの食感がうまれる。

「季節や天気によって生地の調子が変わるので、膨らみ具合を絞る量で調整し、強火で水分が抜けないように一気に焼き上げています」と、日々真剣に向き合う山木さん。

クリームチーズが入ったカスタードクリームは独特のコクがあり、トロンとまろやかな舌触りだ。吉野葛を入れて“もちもち感”を出した生地は、割るとフニュッと焼きまんじゅうにも似た感触である。しっとりもちもちの生地に、まろやかなクリームの組み合わせは、欧米人に比べ唾液が少ないといわれる日本人の好みにも合う。

本場フランス菓子のオリジナル至上主義も一つの考え方だが、日本の風土に合ったお菓子として手を加える山木さんに賛同者が増えている。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「大正ロマンぶっせ」。カスタード1個110円、マロン・抹茶1個130円、5個入り730円、10個入り1360円

【もうひとこと】パッケージもそれぞれの味のイメージに合わせて、山木さんがデザインされたそうです。

【住  所】大阪府池田市栄本町9の6
【電  話】072・754・2959
【営  業】午前10時~午後7時(月曜定休)
【最寄り駅】阪急宝塚線池田駅

msn産経ニュース 2013.5.18 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.05.19 05:56