【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.8.10朝刊)

トランテアンの「ヴァシュラン」

港町デザート進化論

神戸ポートピアホテル最上階に昨年5月にオープンしたフレンチレストラン「トランテアン」。フランスミシュランガイド二つ星「ラ メール ブラジィエ」の提携店として、フランス産と地元産の食材を使って本場フランスの味を進化させている。このレストランのデザートが、とにかくすごい!

シェフパティシエの芳養(はや)正朗さん(38)は大学卒業後、いきなり街の洋菓子店に就職し、菓子製造技術を働きながら習得した。学生時代のカフェでのアルバイト経験から、カフェベーカリーに興味を持ったのがきっかけだ。

一見しただけでは、何でできているか想像もつかない。真っ白で卵のような球体の美しいメレンゲのドーム。深紅のバラを包むのは、紙状に薄く延ばされたフランボワーズ(キイチゴ)のゼリーだ。パリンと割れるかと思いきや、グニャリとやわらかく、パート・ド・フリュイ(フルーツをペクチンで固めたもの)に近い味と食感。ふたを外すと、真っ白なバニラアイスの下にフランボワーズやライチのムースが現れる。

メレンゲのドームは半球のシリコン型の壁にメレンゲの生地を薄くすりつけ、50度の低温で一晩乾燥焼きにする。シュワッと軽やかに口どけるよう、メレンゲの気泡量は最大限に。ライチのムースもしっかりと気泡を入れてふわふわの固形状態を保っている。バニラアイスは練りたてで滑らかな口解けだ。フランボワーズとグレープフルーツのフレッシュな果汁が、泡立てた生クリームの脂質を爽やかな味に変化させる。

「全てのパーツを一緒に混ぜて食べてください」と芳養さん。メレンゲ、ムース、生クリーム、アイスクリームの異なるパートの口溶けのタイミングがピタリとそろっている。メレンゲとクリームの甘味がフランボワーズの鮮烈な香りと酸味で包み込まれ、甘酸っぱさの振幅を広げる。

何より大切なのは、この皿を出すタイミングだ。メーンディッシュの余韻を損なわない絶妙な間を見計らってデザートが運ばれるよう、逆算をして準備する。最後にのせるアイスクリームが、お客さんがふたを取ったときにちょうどよいかたさになるように…。

サプライズに満ちたビジュアルと、スリリングな味わいで食事を締めくくる。持ち帰りのお菓子では表現できないデザートの魅力だ。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「ヴァシュラン」2310円、コース料理(1万7325円)のデザートとしても選べる

【もうひとこと】今月29日にNPO法人神戸スイーツ学会が試食会を企画しています。
http://www.kobe-sweets.org
電話06・6809・1703(平日のみ)

神戸ポートピアホテル トランテアン
【住  所】神戸市中央区港島中町6の10の1
【電  話】078・303・5201
【営  業】午前11時半~午後2時半、午後5時半~10時(土・日曜と祝日は午後5時~、月曜休)
【最寄り駅】ポートライナー市民広場駅

msn産経ニュース 2013.8.10 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.08.11 07:13