【産経新聞社】大阪甘味(スイーツ)図鑑(2012.12.22朝刊)

ANAクラウンプラザホテル大阪の「ショコラ フランボワ」

鮮烈を追求し絶妙のバランス

大阪キタのANAクラウンプラザホテルはビジネス街と北新地に隣接している。ペストリーシェフの斎藤浩一さん(42)は洋菓子のコンテストで幾多の受賞歴を持ち、平成23年度「なにわの名工」に選ばれるなど、高い技術を持つ職人として信頼が厚い。

「親が北新地で飲食業を営んでおり、子供の頃は当時“味のプラザ”と称されたホテルプラザ(平成11年廃業)のパンやケーキを土産によく買ってもらってい ました。その味が忘れられず、今もお気に入りのスイーツはその頃から好きだったシュークリームやチーズケーキです」と語る。

斎藤さんが入社した頃のクリスマスケーキは、定番のブッシュドノエルとショートケーキ程度だったが、シェフとなってからは毎年、趣向を凝らしたケーキを開発し、新作を待ち望む客も増えてきた。

「ショコラ フランボワ」はミルクチョコレートとフランボワーズのムースのケーキだ。真ん中にピスタチオのババロアが入り、その中に冷凍のフランボワーズ が並んでいる。フランボワーズの色を出すために褐色のビター系は使わず、ミルクチョコレートを選択した。ミルクチョコレートの甘味をフランボワーズの酸味 でうまく中和している。より鮮烈な香味を求め、あえて冷凍のフランボワーズを使用した。

フランボワーズとピスタチオとチョコレートはお互いを引き立てあう素材のトリオだ。チョコレートの風味をフランボワーズの爽やかな酸味が消化させる。ゆっくりと口中で溶けるとチョコレートのコクの奥からピスタチオの枝豆っぽい青い香りが広がる。

飾りの果物には特に気を使う。10年ほど前、イチゴが傷んでいたことを見逃したために、300~400 台のケーキを作り直したことがあったという。以来、とりわけイチゴは一粒ずつ目を通している。サイズ、色、香りも確認。国産にもこだわり、手に入らない時 期には、イチゴを使ったものは作らないほどの徹底ぶりだ。バブル前よりの北新地を知る斎藤さんだからこそ、“ハレ”のホテルスイーツにふさわしい贅沢(ぜ いたく)感を絶妙のバランス感覚で演出できるのだろう。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「ショコラ フランボア」3千円(右)、「ブッシュド ノエル」4200円

【もうひとこと】
クッキーの台にのったブッシュドノエルは毎年大人気。スフレタイプの生地は口解け最高です。

【住  所】大阪府大阪市堂島浜1の3の1
【電  話】06・6347・1112
【営  業】午前?時~午後9時(無休)
【最寄り駅】地下鉄淀屋橋駅、京阪大江橋駅

産経関西 スイーツ物語 2012.12.22