群愛飯店本店の「南瓜プリン」
出合いが産んだ驚きの味
中華料理のデザートと言えば、胡麻団子、杏仁豆腐、マンゴープリンなどが有名だが、南瓜(かぼちゃ)プリンとは珍しい。
神戸の老舗中華料理店、群愛飯店は今年、創業48年を迎える。総料理長の施蓮華(シレンカ)さん(60)は中学生の時、父が大阪で独立創業した店で初めて中華料理に触れた。家業を手伝いながら学業を終え、料理人への道を選んだ。
神戸で10年ほど前、知人の経営する南瓜専門商社の「栗マロンかぼちゃ」に出合った。糖度が高く独特のホクホク感がある。通常は種を直播きして栽培するが、苗床で育てて良い苗だけを植え付け、手間をかけて育てている。しかも収穫量は通常の約半分と、生産者泣かせの代物だ。当然、高級品だが、東京、大阪の有名デパートやスーパーなどで販売され、人気を集めている。
施さんは4、5年前から、これをスイーツにできないかと試作を重ね、3年前に商品化。マンゴープリンをヒントに、南瓜のコクと甘味を生かした。「糖度が高い分、砂糖を控えることができ、自然の優しい甘味を前面に押し出せました」と話す。
蒸した南瓜ペーストと牛乳をミキサーにかけ、ホイップクリームや生クリーム、砂糖、ゼラチンを合わせる。型に流して冷やし固めるが、その前に、氷水で粗熱をとるまで冷やすのがポイントだ。マンゴープリン同様、混ぜ合わせた生地が分離しないように、ある程度の粘度になるまで時折かき混ぜながら急速に冷やすと、均一性が保持できるという。
ツルンとした食感を舌先に感じた後、滑らかな生地と上にかけられたエバミルクが一緒になり、口中の温度で緩やかに溶ける。同時に訪れるのは、南瓜であるのが信じられないくらい強い栗の香りだ。
施さんは25年ほど前、香港からシェフを招いて、父から引き継いだ広東料理と、香港料理のいいとこどりをして融合させた。香港料理のデザートにも魅了され、タピオカのココナッツミルクやマンゴープリンなどをメニュー化した。その時、マンゴープリンのソースとして使用したのがエバミルクだ。脂肪分の少ないエバミルクをそのままソースにすることで、あっさりとした口当たりに仕上がっている。
(文と写真 「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
<もうひとこと>
お持ち帰りはできませんので、お料理の後のデザートにどうぞ。
「群愛飯店」本店
【住 所】神戸市中央区中山手通3の4の6
【電 話】078・332・5203
【営 業】午前11時半~午後9時半(ラストオーダーは午後8時半、第1・第3木曜が定休)
【最寄り駅】近鉄南大阪線河内松原駅