【産経新聞社】関西甘味(スイーツ)図鑑(2013.8.17朝刊)

ラヴィルリエの「パリ・ブレスト・アロンジェ」

ルーツは自転車

ラヴィルリエの「パリ・ブレスト・アロンジェ」

大阪市北区の扇町公園の北、真っ赤な外壁が新名所になりつつある。ラヴィルリエは平成21年にオープンした大阪では珍しい本格的なフランス菓子のお店だ。昨年12月、現在の場所に移動した。

オーナーシェフの服部勧央さん(40)は出身地の岐阜や大阪、東京で修行をした後、大阪市北区神山町で店を開いた。修行経験は長いが、製菓が担当だった時期は数年で、独学でフランス菓子を学んだ。「最初は日本語の本で勉強し、そのうち原書を辞書をひきひき試作を重ねました」と服部さん。15年前に渡仏し、1カ月間現地で生活して、フランスのお菓子だけでなく素材や文化に触れ、その味を記憶に留めた。独学で、しかも書物でどうやって味や状態を確かめるのか? 毎年のようにフランスに通い、本場の味と答え合わせを重ねるのだ。

パリブレストはフランス菓子の中ではさほど古くない。パリからブレストまでを往復する自転車ラリーの大会にちなみ、19世紀に作られた。オリジナルは車輪を模した大きなリング形だが、服部さんは棒状に成形している。「フランスでもこの形しか見たことがありません。作るにも、並べるにも、食べるにも効率がいいからでしょう」

6、7種類の粉をブレンドしたシュー生地を、サックリとした食感を出すために芯までしっかりと焼き込む。間に挟む「プラリネ」(アーモンドとヘーゼルナッツを生からゆでて皮をむき、糖液でキャラメル化したもの)は自家製だ。プラリネを炊く温度は温度計の数値ではなく、色を目で確かめ、香りと混ぜるときの手の感覚を頼りに最高の状態へと導く。これをバタークリームと合わせた「クレーム・オ・ブール」と、カスタードクリームと合わせた「クレームパティシエール」を2層にした。重くなりがちなバタークリームは少量に、軽めのカスタードクリームは多めに絞り、食べやすくする。編み込まれたかのようなクリームの絞りが地味な色合いのお菓子に花を添える。

ボリューム感たっぷりのクリームは、シュー生地と一緒に口に入れると、膨らんだ生地の間にスッポリと吸い込まれる。生地から小麦の素朴な香りが立ち上り、アーモンドやへーゼルナッツのフレッシュな青い香りと競い合う。トッピングされた砂糖やナッツの飾りは甘味のアクセントとなり、くるくると回る車輪のごとく、めくるめく楽しさに満ちたひとときだ。

(文と写真「関西スイーツ」代表・三坂美代子)
「パリ・ブレスト・アロンジェ」420円

【もうひとこと】手の込んだ仕事の見えるフランス菓子がショーケースを彩っています。

パティスリー ラヴィルリエ
【住  所】大阪市北区山崎町5の13
【電  話】06・6313・3688
【営  業】午前11時~午後8時(商品完売次第閉店)、火曜と水曜定休
【最寄り駅】大阪市営地下鉄中崎町

msn産経ニュース 2013.8.17 10:00
産経関西 スイーツ物語 2013.08.18 05:57